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医療費控除でいくら戻る?10万円ルールとセルフメディケーション税制の比較(2026年分)

医療費控除は「医療費が10万円を超えたら使える制度」と思われがちですが、所得が200万円未満なら10万円未満でも使えます。戻ってくるお金のしくみ、年収別の目安、家族の合算、セルフメディケーション税制との選び方、申告の手順まで、2026年(令和8年分)の税制で整理します。

公開: 2026-10-16

「医療費控除でいくら戻るのか」は、医療費の額だけでは決まりません。控除額を決める足切りのルールと、申告する人の税率で変わるからです。この記事では、2026年(令和8年分)の税制にもとづいて、計算のしくみから申告の手順までを順に整理します。金額の例は、すべて医療費控除計算ツールで計算した値です。

医療費控除の計算式(補填・足切り・上限200万円)

医療費控除は、1月1日〜12月31日に自分や生計を一にする配偶者・親族のために支払った医療費が一定額を超えたとき、その超えた分を所得から差し引ける制度です。控除額は次の式で計算し、上限は200万円です(国税庁 No.1120)。

医療費控除額 =(支払った医療費 − 保険金などで補填される金額)− 足切り額
足切り額は10万円。ただし総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%
  • 補填される金額:生命保険の入院給付金、健康保険の高額療養費・家族療養費、出産育児一時金など。差し引くのはその給付の対象になった医療費が限度で、余った分をほかの医療費から引く必要はありません。
  • 支払った年で数える:対象はその年に実際に支払った分です。年末に受診して翌年に支払った分は、翌年の医療費になります。

たとえば入院と通院で30万円を支払い、保険の入院給付金が5万円出たなら、(30万円−5万円)−10万円=15万円が控除額です。

「10万円を超えないと使えない」は誤解

足切り額は「10万円」と「総所得金額等の5%」の低いほうです。総所得金額等(給与所得・事業所得・年金の雑所得などの合計)が200万円未満の人は5%が使われ、医療費が10万円に届かなくても控除を受けられます。給与だけの人なら総所得金額等は「年収−給与所得控除」で、2026年分は年収およそ297万円未満がこれにあたります。

給与の年収総所得金額等足切り額
150万円76万円3万8,000円
200万円126万円6万3,000円
250万円167万円8万3,500円
約297万円以上200万円以上10万円

ただし所得が少ない人は税率も低いため、戻る額は大きくありません。2026年分・単身の会社員で計算すると、年収250万円・医療費10万円なら控除額は1万6,500円で、戻るのは2,227円です。年収200万円・医療費8万円なら控除額は1万7,000円ですが、所得税はもともと0円なので、翌年度の住民税が1,800円減るだけです。

戻るお金は「所得税の還付+翌年度の住民税の減額」

医療費控除は所得から差し引く控除なので、戻ってくるのは医療費そのものではなく、控除額に税率をかけた分の税金です。会社員なら、確定申告で年末調整の所得税の納めすぎ分が還付され、さらに翌年度の住民税(2026年分なら2027年6月からの令和9年度分)が安くなります。目安は「控除額×(所得税率×1.021+10%)」で、1.021は復興特別所得税、10%は住民税の所得割の税率です。

課税所得(所得税)所得税率戻る割合の目安
195万円未満5%控除額の約15%
195万〜330万円未満10%約20%
330万〜695万円未満20%約30%
695万〜900万円未満23%約33%
900万〜1,800万円未満33%約44%

課税所得は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計額」を引いた額です(税率は国税庁 No.2260)。ただし、この掛け算は目安です。控除で課税所得が税率の境目をまたぐと、高い税率がかかるのは境目までなので、実際の還付は少なくなります。たとえば年収700万円・医療費50万円(控除額40万円)では、課税所得が349万円から309万円に下がって330万円の境目をまたぐため、所得税の還付は単純計算の約8.2万円(40万円×20.42%)ではなく6万159円です(住民税の減額4万円と合わせて10万159円)。また還付は納めた所得税が上限で、年収300万円・医療費70万円なら所得税の還付は2万6,600円(年末調整後の所得税の全額)で頭打ちです。住民税の額は住民税計算ツールで、翌年度に課税されるしくみは住民税のしくみで確認できます。

年収・医療費別の戻る額の目安(2026年分)

年収300万・500万・800万円の会社員が、医療費を15万・30万・50万円支払った場合を計算しました。金額は、所得税の還付と翌年度の住民税の減額の合計です。

年収医療費戻る額の合計
300万円15万円7,505円
30万円30,162円
50万円60,372円
500万円15万円7,467円
30万円30,125円
50万円60,335円
800万円15万円15,175円
30万円60,805円
50万円121,645円

※前提:2026年(令和8年分)、給与収入のみで年末調整を受けている、単身で扶養なし、40歳未満(介護保険料なし)、社会保険料はツールの自動概算(協会けんぽ・東京、賞与なし)、ほかの所得控除なし、保険金などの補填なし。

3つの年収はいずれも総所得金額等が200万円以上なので、控除額は医療費15万円で5万円、30万円で20万円、50万円で40万円です。住民税の減額は控除額の10%(5,000円・2万円・4万円)で、残りが所得税の還付です。たとえば年収800万円・医療費30万円なら、所得税の還付4万805円+住民税の減額2万円=6万805円です。

年収300万円と500万円がほぼ同じなのは、2026年分から所得税の基礎控除が最大104万円に引き上げられ(国税庁 No.1199)、この前提ではどちらも課税所得が195万円未満で所得税率5%になるためです。税率20%の年収800万円では、同じ医療費でも約2倍戻ります。扶養家族や介護保険料がある人、源泉徴収票の数字で計算したい人は医療費控除計算ツールで試算してください。

家族の医療費は合算できる|誰が申告すると得?

生計を一にする配偶者や子ども、親のために支払った医療費は、合計して1人がまとめて控除を受けられます。共働きで妻に所得があっても、夫が妻の医療費を支払ったなら夫の控除の対象です(国税庁 質疑応答事例)。離れて暮らす親でも、仕送りで生活しているなど生計を一にしていれば対象です(同)。控除を受けられるのは実際に支払った人なので、誰が申告するかは誰が払うかで決まります。

一般には税率の高い人が申告すると多く戻りますが、所得200万円未満の人は足切り額が下がるため、逆転することもあります(2026年分。ツールの家族比較で計算し、配偶者控除などのほかの控除は入れていません)。

夫婦の年収(医療費)年収の高い人が申告年収の低い人が申告
800万円と200万円(15万円)15,175円8,800円
500万円と250万円(12万円)2,936円5,248円
500万円と250万円(30万円)30,125円32,437円

年収200万円の人は足切り額が6万3,000円で控除額は8万7,000円と大きくなりますが、所得税がかからないため住民税の8,800円しか減りません。一方、年収500万円と250万円の組み合わせでは、2026年分はどちらも所得税率5%なので、足切り額が8万3,500円で控除額が多くなる年収250万円の人のほうが有利です。医療費控除計算ツールの「家族の誰が申告すると得?」で、家族の所得を入れて比べられます。

対象になる医療費・ならない医療費

対象は病気やけがの治療・療養のための費用で、予防・健康増進・美容のための費用は対象外です。主な例は次のとおりです(国税庁 No.1122ほか)。

対象になる例対象にならない例
医師・歯科医師の診察・治療費健康診断・人間ドック(重大な病気が見つかり、引き続き治療した場合は対象)、医師へのお礼
治療のための薬(処方薬、かぜ薬などの市販薬)予防や健康増進のためのビタミン剤など
通院の電車・バス代、電車やバスで行けないときのタクシー代自家用車で通院したときのガソリン代・駐車場代
入院の部屋代・食事代自分や家族の都合で選んだ個室の差額ベッド代、寝巻き・洗面具
金・セラミック(ポーセレン)など一般的な材料での歯の治療、子どもの成長に必要な歯列矯正見た目をよくするための歯列矯正
妊娠と診断されてからの定期検診・検査、出産の入院費実家で出産するための帰省の交通費
介護保険の訪問看護・通所リハビリなどの自己負担生活援助が中心の訪問介護、有料老人ホームの費用

出産・入院・介護保険・歯の治療の具体例は、国税庁のNo.1124・No.1126・No.1127・No.1128にあります。判断に迷うときは税務署に確認してください。

セルフメディケーション税制との比較と2027年からの見直し

セルフメディケーション税制は医療費控除の特例です。対象の市販薬(スイッチOTC医薬品など。レシートに対象である旨が表示されます)の購入費のうち1万2,000円を超えた部分を、最高8万8,000円まで所得から差し引けます。使えるのは、申告する本人がその年に健康診断・予防接種・がん検診などの「一定の取組」を行っている場合です(家族は不要)。通常の医療費控除とはどちらか一方しか選べず、申告後に更正の請求や修正申告で選び直すこともできません(国税庁 No.1129・No.1131)。

医療費(うち対象の市販薬)通常の医療費控除セルフメディケーション税制
8万円(3万円)0円2,634円
12万円(5万円)2,936円5,655円
15万円(3万円)7,467円2,634円

※年収500万円・2026年分で、目安表と同じ前提で計算した戻る額の合計。医療費は対象の市販薬を含む合計で、控除額は通常の医療費控除が0円・2万円・5万円、セルフメディケーション税制が1万8,000円・3万8,000円・1万8,000円です。

治療のための市販薬は通常の医療費控除にも含められ、税率はどちらも同じなので、控除額が大きいほうが得です。対象の市販薬が1万2,000円を超え10万円以下なら、病院代など市販薬以外の医療費が8万8,000円未満のときはセルフメディケーション税制のほうが控除額が大きくなります(総所得金額等が200万円以上の場合)。

2027年分からの見直し(令和8年度税制改正)

  • スイッチOTC医薬品は適用期限がなくなり(恒久化)、それ以外の対象医薬品は2031年12月31日まで延長されました。
  • 2027年1月から、胃腸薬・便秘薬・痔の薬、生薬を使ったせき・たんの薬、新型コロナ(インフルエンザとの同時検査を含む)の抗原検査キット、排卵日予測検査薬などが対象に加わります(対象かどうかは成分などで決まるので、レシートの表示で確認します)。
  • やせる目的などで使われる防風通聖散・大柴胡湯は対象外になります(防風通聖散は2030年末までは対象)。

出典は厚生労働省 セルフメディケーション税制と、同省の事務連絡(2026年8月7日)です。

申告のしかた(年末調整では受けられない)

医療費控除は年末調整では受けられないため、会社員でも確定申告が必要です。所得税の納めすぎを取り戻す申告は「還付申告」といい、確定申告期間(2026年分は2027年2月16日〜3月15日)とは関係なく、翌年1月1日から5年間提出できます(国税庁 No.2030)。2026年分なら2031年12月31日まで、2025年分は2030年12月31日までです。すでにその年の確定申告をした人は、更正の請求で医療費控除を追加します。

  1. 明細書を作る:領収書を「医療を受けた人」「病院・薬局など」ごとに集計し、「医療費控除の明細書」を確定申告書に添付します。領収書の提出は不要です。
  2. 医療費通知を使う:健康保険から届く「医療費のお知らせ(医療費通知)」を添付すると、その分の明細の記入を簡略化できます。マイナポータル連携なら、医療費通知の情報を確定申告書等作成コーナーに自動入力できます(家族の分は代理人の設定が必要)。通院の交通費や市販薬などは含まれないので、別に入力します。
  3. 領収書が多いときは集計フォーム:国税庁の医療費集計フォーム(Excel)に入力して保存すると、作成コーナーで読み込めます。セルフメディケーション税制では使えません。
  4. 提出する:e-Tax(スマホとマイナンバーカードでも可)か、郵送・税務署への持参で提出します。

領収書は、確定申告期限等から5年間は税務署から提示や提出を求められることがあるので、自宅で保管してください(医療費通知を添付した分を除く)。セルフメディケーション税制を使う場合は、健康診断などを受けたことがわかる書類(結果通知表や領収書など)も同じように保管します。

ふるさと納税のワンストップ特例との関係

ふるさと納税でワンストップ特例を申請していても、医療費控除のために確定申告をするとワンストップ特例は使えなくなります(申請は無効になります)。ふるさと納税の寄附金控除も確定申告書に記入しないと、寄附の控除が受けられません(総務省)。寄附金受領証明書を用意して、医療費と一緒に申告しましょう。確定申告にしても控除の合計はほぼ同じで、所得税の還付と住民税の減額に分かれるだけです。

また、医療費控除で所得が下がると住民税の所得割も下がるため、ふるさと納税の控除上限額が少し下がることがあります。寄附の前にふるさと納税 限度額シミュレーターツールで確認しておくと安心です。上限が決まるしくみはふるさと納税の限度額はどう決まる?で解説しています。

※本記事は、2026年10月時点の法令と、国税庁・厚生労働省・総務省の公表資料をもとに、医療費控除とセルフメディケーション税制の一般的な情報をまとめたものです。金額の例は医療費控除計算ツールで計算した目安で、実際の還付額や住民税の額は、所得や控除、住んでいる市区町村などによって異なります。医療費が控除の対象になるか、どちらの制度を選ぶかなど個別の判断は、税務署や税理士にご確認ください。

よくある質問

医療費が10万円以下でも医療費控除は受けられますか?

受けられる場合があります。足切り額は10万円と総所得金額等の5%の低いほうなので、総所得金額等が200万円未満(給与だけなら2026年分は年収およそ297万円未満)の人は、10万円未満でも足切り額を超えた分が控除されます。たとえば年収200万円なら総所得金額等は126万円で、足切り額は6万3,000円です。ただし所得が少ない人は税率も低いため、戻る額は控除額の1〜2割程度です。

医療費控除でいくら戻りますか?

戻るのは医療費そのものではなく、所得税の還付と翌年度の住民税の減額です。目安は控除額×(所得税率×1.021+10%)です。2026年分・単身の会社員で計算すると、医療費30万円(控除額20万円)なら年収500万円で30,125円、年収800万円で60,805円です。控除で課税所得が税率の境目をまたぐ場合や、所得税がもともと少ない場合は、この目安より少なくなります。

セルフメディケーション税制と医療費控除は両方使えますか?

使えません。どちらか一方を選び、申告した後で更正の請求や修正申告によって変えることもできません。対象の市販薬が多く病院代が少ない年はセルフメディケーション税制(1万2,000円を超えた部分、上限8万8,000円)、入院や通院が多い年は通常の医療費控除が有利になりやすいので、両方の控除額を比べて選びましょう。セルフメディケーション税制は、申告する本人がその年に健康診断や予防接種などを受けていることが条件です。

会社員ですが、年末調整で医療費控除を受けられますか?

受けられません。医療費控除は年末調整の対象外なので、確定申告(還付申告)が必要です。還付申告は確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出でき、2026年分なら2027年1月1日から2031年12月31日までです。すでにその年の確定申告をしている場合は、更正の請求で医療費控除を追加します。

家族の医療費は誰が申告すると得ですか?

生計を一にする家族の医療費は合計でき、実際に支払った人が控除を受けます。一般には税率の高い人が申告すると多く戻りますが、総所得金額等が200万円未満の人は足切り額が低いため逆転することがあります。2026年分は基礎控除の引き上げで年収500万円の人も所得税率5%になることがあり、年収500万円と250万円の夫婦で医療費12万円なら、年収250万円の人が申告したほうが多く戻ります(ツールで計算すると2,936円と5,248円)。

ふるさと納税のワンストップ特例を申請していても、医療費控除で確定申告できますか?

できますが、確定申告をするとワンストップ特例は使えなくなるため、ふるさと納税の寄附金控除も確定申告書に記入する必要があります。記入しないと寄附の控除が受けられません。また、医療費控除で所得が下がると、ふるさと納税の控除上限額が少し下がることがあります。

領収書は提出しますか?いつまで保管しますか?

確定申告書には「医療費控除の明細書」を添付し、領収書の提出は不要です。ただし確定申告期限等から5年間は、税務署から領収書の提示や提出を求められることがあるので、自宅で保管してください(医療費通知を添付した分を除きます)。領収書が多いときは、国税庁の「医療費集計フォーム」に入力すると、確定申告書等作成コーナーで読み込めます。